【第2回】『忙しい=成果』の錯覚が企業を破綻させる
生産性向上の真実
キープビジーの落とし穴
分刻みのスケジュールに潜む危険
朝から8件のアポイントが入った日——あなたはどう感じますか?
「今日も分刻みのスケジュールで動き回った結果、何だか楽しくなってしまった」
実は、これは多くの経営者が経験する感覚です。忙しく働いている時の充実感、達成感——確かに気持ちの良いものです。
しかし、この感覚にこそ最大の罠が隠されています。
「キープビジー」の本来の意味
「キープビジー」という言葉をご存知でしょうか。多くの人は「忙しくする」という意味で理解していますが、実は違います。
本来の意味:「筋肉を動かし続けること」
→ 体を動かすことで余計なことを考えず、不安から解放される
実際、成果を出している経営者に筋トレが趣味という人が多いのは、この効果を実感しているからです。
💪 身体的効果
良いホルモンの分泌
ストレス軽減
🧠 精神的効果
不安からの解放
集中力向上
📈 生産性効果
判断力向上
持続力アップ
つまり、適度な忙しさは確実に生産性向上に効果があるのです。
問題は「適度」を超えた時
しかし、問題はここからです。
忙しさが「適度」を超えて「過度」になった時、私たちは重要なことを見失います。
それは「成果」よりも「忙しさ」そのものに価値を感じてしまうことです。
忙しさに隠された中毒性の正体
なぜ「忙しい」は気持ちいいのか
分刻みにスケジュールをこなしていく中で、だんだん気分が良くなってくる——この現象には科学的な根拠があります。
つまり、忙しく働いている時、私たちの脳は「快楽物質」を大量に分泌しているのです。
「やってる感」という最悪の錯覚
しかし、この快楽物質には恐ろしい副作用があります。
たとえ成果に繋がっていなくとも「やってる感」に支配される
これは、単純にサボっているよりもタチが悪い状態です。なぜなら:
- 改善が遅れる → 「こんなにやってるんだから」という思い込み
- 対策が遅れる → 客観的な分析ができなくなる
- 軌道修正が遅れる → 間違った方向へ全力疾走
教育システムが作り出した「努力信仰」
なぜ私たちは「やってる感」に騙されやすいのでしょうか。
それは、日本の教育システムにあります:
教育現場でよく聞く言葉:
- 「成果よりもプロセスを評価する」
- 「結果よりも努力部分を認める」
- 「頑張ったことが大切」
確かに教育の場では重要な考え方です。しかし、ビジネスの世界では逆効果になることがあります。
働き方改革が生んだ新たな問題
ホワイト企業化の皮肉な結果
近年の働き方改革により、多くの企業が残業時間の削減に取り組みました。
その結果、確かに「ホワイト企業」と呼ばれる会社は増えました。しかし、予想しなかった問題が発生しています。
⚠️ 働き方改革の副作用
❌ 企業側の問題
- 新入社員に責任ある仕事を任せられない
- 無理な残業をさせることができない
- 結果的に成長機会を奪ってしまう
😰 社員側の不安
- 「仕事ができない人材になるのでは?」
- 「このままで将来大丈夫?」
- 「他社で通用するスキルが身につかない」
大企業で起きている離職率上昇の謎
驚くべきことに、働き方改革を積極的に推進した大企業で、転職希望者が半数以上に上るという調査結果があります。
📊 ホワイト企業の皮肉な現実
転職希望者
離職率上昇
将来への不安
なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
「暇な時間」が生む不安の正体
答えは意外にシンプルです。
暇な時間が多いから、将来について考えてしまう
適度に忙しい時は、目の前のタスクに集中できます。しかし、時間に余裕ができると:
- 「自分は成長しているのだろうか?」
- 「このスキルレベルで他社でも通用するのか?」
- 「もっとチャレンジングな環境に身を置くべきでは?」
こうした不安が、せっかくホワイト企業になった会社からの離職につながっているのです。
真の生産性向上への転換点
忙しさと成果を分けて考える
では、どうすれば「忙しさの罠」から抜け出せるのでしょうか。
答えは、忙しさと成果を完全に分けて考えることです。
キープビジーと客観性の両立
重要なのは、キープビジー(適度な忙しさ)を否定することではありません。
適度な忙しさを維持しながら、同時に客観的に自分を律することができる——これが最高の状態です。
しかし、これは「簡単に言うけど、めちゃめちゃ難しい」のも事実です。
組織として取り組むべき施策
個人の努力だけでは限界があります。組織として以下の仕組みを構築することが重要です:
📊 成果測定システム
- KPI/OKRによる目標設定
- 定量的な評価指標
- 定期的な進捗確認
🔍 振り返りの仕組み
- 週次・月次のレビュー
- 客観的な現状分析
- 改善点の明確化
⚖️ バランス管理
- 適度な負荷の維持
- 過度な忙しさの防止
- 質の高い休息時間
まとめ:成果創出への意識改革
忙しさそのものは悪いものではありません。問題は、忙しさと成果を混同してしまうことです。
⚠️ 次回予告
では、どうすれば組織全体の生産性を効果的に向上させることができるのでしょうか?
次回は「ボトルネック理論」を使った具体的な組織運営手法について解説します
📝 次回予告
ボトルネック理論で解く組織運営|最弱の社員を基準にした成長戦略
✅ この記事のまとめ
- 適度な忙しさは生産性向上に効果があるが、過度になると「やってる感」に騙される
- 忙しさには中毒性があり、成果よりもプロセスを重視してしまう危険がある
- 働き方改革により、逆に将来への不安を感じる社員が増加している
- 真の生産性向上には、忙しさと成果を分けて考える仕組みが必要
📚 シリーズ記事:
- 第1回:なぜ優秀な人材ほど組織で孤立するのか?天才依存から脱却する経営戦略
- 第3回:ボトルネック理論で解く組織運営|最弱の社員を基準にした成長戦略(近日公開)